ウツボグサ

  裏門の近くに、一叢の青紫色の花が咲いています。草丈は低いのですが、目につくのでしょう。「あの花の名前は?」と多くの方に訊かれます。その青紫色の花は、ウツボグサと云います。

 私は東京から船橋に越して来ましたが、数年経った25年ほど前、知人に誘われて行った印西牧ノ原の野原で、初めて見たウツボグサの花色に目を奪われました。そこにはレンリソウ、カセンソウ、チダケサシ、トリカブト、カシワバハグマ、アキギリ、タチフウロ、センブリ、キハギ・・・等等、本で見て名前だけは知っていた植物が一面自生していたのです。東京からこんなに近いのに、未だ未だ自然は残っていると嬉しくなって何度も足を運びました。しかし、その後は開発され、大型ホームセンターや配送センターなどが建って、今では見る影もありません。
 こんなになるのだったら、採ってきて “里親” になっておけばよかったと、残念でなりません。

 

 ウツボグサは、日本の日当たりのよい山野の草地や丘陵に自生している多年草です。“幼い頃、故郷ではよく目にした・・・”と思い出される方もいらっしゃることでしょう。匍匐性なので、這うように拡がります。草丈は20~30程で茎の頂きに唇弁花を蜜につけます。茎と葉は、シソ科特有の十字対生です。このことは、コモンセージの項でも触れましたので、参照してください。

 

 花期は、6月~8月までで、茎の頂きに唇形花を密集して穂状につけます。花が終わると地面に接した部分が枝を分岐して拡がり、その先端が翌年の苗になり叢生します。花が終わると花穂は褐色になり、枯れたかに見えます。褐色になって毛ばだった花穂には、たくさんの種子がついているので、こぼれ種でもよく増えます。

   

  その花穂は、日本薬局方に入っていて生薬では夏枯草(カゴソウ)と呼ばれ、漢方では夜に悪くなる眼球の痛みや、涙のう炎などに処方されています。民間療法では、煎液を口内炎や扁桃炎に、うがい薬として、また膀胱炎、腎臓炎などに利尿薬として用いられています。

                   夏枯草→

 ウツボとつけば、魚や、食虫植物のウツボカズラと似ているからなのかと思われるでしょうが、そうではありません。

 名前の由来は、弓を入れる矢筒を靫(うつぼ)に由来します。その靫を保護する毛皮に、毛羽だった花穂が似ていることに依るのです。

 

 同じように用いられるものに、ハーブではセルフヒールと呼ばれるセイヨウウツボグサPrunella vulgaris subsp. vulgarisがあります。西洋では“この草があれば怪我したとき自分直せる”といわれていたことから、自己治癒⇒セルフヒールと名前がついたと17世紀の本草家ニコラス・カルペパーは書いています。

 セイヨウウツボグサはヨーロッパ全域に自生するウツボグサの近縁種です。ウツボグサより草丈は短く花穂も短くつきます。同じように、匍匐枝を出して拡がりマット状になります。少々踏まれても花はさきますので、グランドカバーに使えるでしょう。セイヨウウツボグサは、全草を切り傷に外用したり、駆風、収斂薬として利用する他に、ハーブティーとしても利用されます。

 

 ギリシャ時代の医者、ペダニウス・ディオスコリデスは、花穂の形が人間の喉の形に似ていることから植物の効能を判断していたそうですが、同じようにラングワートPulmonaria officinalisの葉の斑紋が、病んだ肺の斑紋に似ているので“肺の草”といわれていますが、薬草の薬効はそうやって見極めていたのでしょうか。現代の私たちは、こうして積み重なった経験の恩恵に預かっているのですね。

 

 日本固有種に、タテヤマウツボグサPrunella prunelliformisがありますが、こちらは薬用には用いません。

原産地:ウツボグサ  日本、東南アジア温帯地域
    セイヨウウツボグサ  ヨーロッパ全域
形 態:茎は四角、葉は対生し、全株に白い細かい毛が密生しています。草丈は

    30mほど、花期は6~8月、茎の頂きに青紫色の唇弁花を穂状につけます。  

    花後は地面に接した部分が分岐して拡がり先端の新しい芽を作り、翌年の

    苗になります。
学 名:ウツボグサ  Prunella vulgaris subsp. Asiatica
    セイヨウウツボグサ  Prunella vulgaris subsp. vulgaris 
科 名:シソ科
生薬名:夏枯草 カゴソウ
利用部位:花穂⇒8ガツ初旬、褐色に要り付いた花穂を刈り取り、日干しします。

      生葉⇒擂り潰して、切り傷の応急手当にします。止血に。
利用法:双方とも同じように用います。
    夏枯草⇒・漢方処方で、夏枯草散、止涙補肝散など。
        ・口内炎、扁桃炎に⇒一回量夏枯草3~5gを水300ccで煎じて随

         時うがいします。

        ・利尿薬としては一日量10gを煎じて内服します。
        ・結膜炎には、一日量5gを水200ccで煎じ冷め手から上澄み液を

         脱脂綿にで漉して洗眼しますが、冷蔵庫に保管し1,2日で使い

         切ります。
    セルフヒール⇒ハーブティーに。但しタンニンを多く含むので、単味で長

          期間の連用は、委の弱い方は要注意です。

         ・チンキ剤にして、月経過多や血尿などのあらゆる止血

            に。
         ・煎液は、高血圧、頭痛に。
         ・生の葉は、創傷治癒に。
効 能:肝炎   腎炎   膀胱炎   尿道炎   利尿、 口内炎に。
成 分:フラボノイド(ルチンなど)、ビタミンA,B,C,K脂肪酸、揮発成分。

 

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