オオバコ

 薬草園に植えてあるオオバコを見て、「オオバコの茎を引っ張り合って遊んだものよ。これも薬草なの?」と驚かれた方がありました。子供が葉茎を引き合って遊ぶので「相撲とり草」とも呼ばれます。地方によって呼び名は、オンバコ、オバコ、ギャ-ロッパ、カエロッパなどたくさんあります。それほどよく知られた雑草だと思っていましたが、つい先日友人から「オオバコを探しているけれど見つからない。どこに行けばあるかしら・・・」と訊かれました。その場にいた市原市在住の方も、「そういえば家の近くでも、オオバコは見なくなった。」と云うのです。

 

 それを聞いた翌日、新検見川からの通勤の道を探してみましたが、一本も見つかりませんでした。道のあるところには必ずオオバコはあると思っていたのですが、舗装された道では、オオバコは生きられないのでしょう。今の若い人達には、

オオバコはやがて幻の草となってしまうかもしれません。

 

 ところが、園に着いて建物の裏手を探すと、何とそこでは一面にオオバコがあるではありませんか!!

 オオバコの葉は広く大きいので「大葉子」といわれるのですが、茎は短く、地面に埋まっているかに生え、葉は強靱です。種子の表面は粘着質に富んでいるので、踏まれて水気にあうと、轍や人、動物にくっついて分布域を拡げるので、漢名の車前草(しゃぜんそう)の名の由来となっています。(この場合の車は荷車、牛車、馬車をいいますが現代では自動車やバイクですね)こうして拡がるので、山でオオバコに出遭うと、人里に近いと云われています。

 しかし踏みつけられないような場所では、草丈が低いため他の植物の陰になって、生存競争に負けてしまいます。

 

 オオバコは世界各地に分布しており、古くから各地の伝統療法で用いられてきました。日本では漢方や民間療法で、ヨーロッパではハーブとして、又インドでのアーユルヴェーダなどです。

 

 薬用には、在来種のオオバコやトウオオバコ、その変種のヤツマタオオバコや、外来種のセイヨウオオバコ、ヘラオオバコ等を乾燥して、 生薬(しょうやく・きぐすり)の車前草(しゃぜんそう)とします。効能は去痰、鎮咳、利尿に用います。

また秋に結実した花穂だけを切り採り、天日で乾燥させ、種子のみを集めて車前子(しゃぜんし)として咳止め、利尿、去痰、血糖降下に用います。生の葉は、火で炙って腫れ物の吸い出しに患部に貼ります。 

 

 ハーブではセイヨウオオバコ Plantago major をプランテーン、ヘラオオバコをリプワートといい、弛緩性の去痰、抗痙攣、局所加湿、緩下に用います。

アーユルヴェーダでは、同属のインドオオバコ Plamtago ovataが、便秘の家庭薬、治療薬として使われているそうです。
  
 園で植栽しているのは、在来種のオオバコ、トウオオバコ、その変種のヤツマタオオバコ、外来種のヘラオオバコを植栽しています。トウオオバコは、中国から渡来したとか園芸種のように書かれたのも見ますが、本州、四国、九州の日当たりの良い海岸などに自生する在来種の多年草なのです。

そして何故かツボミオオバコも生えています。

 薬用としてばかりでなく、若菜は和え物や天ぷらにして食べられる有用な植物でもあるのです。昔はウサギやニワトリ、小鳥の餌とされていたのですが、今ではペレットフードが主流になっているのでしょうか。

 

 最近では種子を覆っているハスクと呼ばれる外皮を取り除いて、精製したものを“サイリウム”と称し、サプリメントやオオバコ茶としてダイエットに利用されています。サイリウムにはエダウチオオバコが利用されています。

私はエダウチオオバコの名は初めて知ったので、どのような植物なのか気になり調べると、折良く昭和薬科大学で開花中と分かり、見に行ってきました。

 エダウチオオバコのサイリウムは、豊富な食物繊維があり、胃腸内で水分を含んで膨張し、満腹感を得易いことや緩下作用もあることから、ダイエットとして注目されています。しかし過剰な摂取は、下痢や胃痛、低血圧の症状を引き起こしかねないので、注意してください。

 学  名:オオバコ:Plantago asiatica
       トウオオバコ:P. major var. japonica
       ヤツマタオオバコ:P. japonica forma. polystachya
       セイヨウオオバコ:P.major
       ヘラオオバコ:P. lanceolate
       エダウチオオバコ:P.psyllium
      ツボミオオバコ:P.virginica(北アメリカ原産の越年草です。全体に
             白い毛で覆われているのでオオバコの仲間には見え
             ませんがオオバコの仲間です。オオバコは多年草です

             が、本種は一年草です。1913年に愛知県で見いださ

             れ、1934年荷は大阪府迄拡がり、現在では関東北部か

             沖縄県まで分布し、道端に群生しています。

             しかし文献を探しても、薬用になるという記載は見つ

             かりませんでした。)
 科  名:オオバコ科
 生  薬 名:車前草(しゃぜんそう)・車前子(しゃぜんし)
 薬用部位:車前草(全草)⇒夏に採取し、水洗いしてから、根元の枯れた葉を取り

             除いてから、先ず天日で干し、乾燥してから陰干し

             にします。
     車前子(種子)⇒秋に花茎を切り採り、新聞紙などに拡げて乾燥させ、

             種子だけを採ります。この時、水気があると、種子の

             表皮が粘性をおびるので、注意して集めてください。
 薬     効:車前子⇒去痰、鎮咳、血糖降下
       車前草⇒去痰、鎮咳、利尿。
 使  用  法: ・咳止めに⇒車前草⇒15~20g荷、水300mlで半量になるまで煎じ,

                                            食後3回に分けて服用します。
           車前子⇒一日量5~10gを、ティーパックに入れて水

                                            200mlで半量になる
               まで煎じ、食後に服用します。
     ・利尿に⇒車前子⇒一日量5~10gを水200mlで半量になるまで煎じ、3

                                         回に分けて食間に服用します。

     ・腫れ物・排膿に⇒生葉⇒水洗いした生の葉は、火で炙って柔らかく

               し、患部に貼り、ガーゼで軽く押さえておき

               ます。
     ・料理に⇒ ・若い葉⇒格別美味しいというものではありませんが食べ

               られます。苦みが強いので,塩湯でして、水に晒し

               てから、よく絞って油炒め、辛子マヨネーズで和

               えます。

          ・生の葉⇒天ぷらに。
          ・大きくなってかたくなった葉⇒オオバコ茶に。
           《オオバコ茶の作り方》

             春~秋に全草を抜き取り、葉についた土をよく落とし

             てから水洗いします(掘りあげて1時間もするとしな

             びてくるので手早くすること)

             →水気を切って、陰干ししてよく乾燥させる→カラカ

             ラに乾燥させ2cmほどに切って軽く炒れば、出来上が

             りです。
   成  分:アウクビン、コリン、オ-クビン、プランタギニン、

      ホモプランタギニン、ゲニポシジンなど。

 

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