セイタカアワダチソウ、もっと身近に・・・

  薬草園でもセイカタアワダチソウを目にするようになりました。北米原産のセイタカアワダチソウは、東京オリンピックの工事のため多量に輸入された木材に種子がついてきたのが、瞬く間に拡がったそうです。未だ幕張本郷駅がなかった頃、津田沼から幕張までの間に、黄色一面の絨毯でも敷かれたかの風景を目にした記憶があります。

後年、花粉症が問題となりセイタカアワダチソウも花粉症の一因といわれていたのは、その繁殖力が花粉を飛ばしで拡がったように思われたからなのでしょう。

 しかし、よく観察してみると、セイタカアワダチソウの花にはハナアブ、ハナバチや名前を知らない蛾の類が群がって来ているので、“セイタカアワダチソウは虫媒花” と分かります。

 

 花はただ咲いているのではなく子孫を残すための知恵を働かせています。気の遠くなるような長い年月をかけて、ハナアブや蛾の助けを借りて確実に受粉する虫媒花です。

 一方風任せで花粉を拡散させる薄利多売方式を選択した風媒花があります。その他には花の構造を変えて自助努力で自家受粉するツユクサのタイプがあります。

 

しかし近年では黄色一面の様は余り目にしなくなりました。セイタカアワダチソウは周りの植物の生長を妨げる毒をだして勢力を拡げるのですが、大繁殖の後はやがてその地の栄養分が枯渇して、自分の毒でやがて滅びる運命のようです。この作用をアレロパシーというそうです。駆逐されていた在来種のススキが近年では勢いを盛り返してきています。

 

 風を頼りの代表格はスギであることは皆様もよくご存じでしょう。米粒ほどのスギの雄花は40万個の花粉を持っているそうですから、1本のスギにある雄花の数とスギの本数を考えれば、飛散する花粉の量は天文学的数字になるでしょう。セイタカアワダチソウによく間違えられる植物にブタクサがありますが、ブタクサはこのスギのタイプです。

 

 花粉症の原因となるのはブタクサであって、セイタカアワダチソウにとってはとんだ濡れ衣だったのです。セイタカアワダチソウの別名は「背高秋の麒麟草」「閉山草」といわれ、茶花にも使われています。アメリカのアラバマ州では、円錐状の黄色い小さな花の仲間をゴールデン・ロット(金の鞭)と呼ばれて州花になっているそうです。

 

 セイタカアワダチソウは、もっと愛でられ親しまれてもよいのではないでしょうか。

 

                                   青山 

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