ツボクサ

 2013年に、S薬科大学から分けて貰ったツボクサです。うっかりするとカキドウシやオオチドメグサと間違えそうになるので、前の職場、東邦大学薬用植物園ではプランタ-に限定して栽培していました。其の時の一株を分けて貰って当園に植えましたが、なかなか生長しなかったので、存在をすっかり忘れていました。

 

ところが、昨夏に園を移動しなくてはならなくなり、夏草を取り除いているとツボクサが一面に拡がっているのに気がつきました。図らずも草に覆われ半日陰状態が、よかったのかもしれません。

  これが、ツボクサです。 ツボクサは、日本では関東地方南部、新潟県以西、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、台湾、中国などに分布する多年草といわれますが、実際にはなかなかお目にかかれないのです。ツボクサを初めて目にしたのは、S薬科大学 温室内。茎は地面を這って伸びていました。よく見れば、節から根を出して拡がっているのです。各節から長い葉柄に腎形の葉を24枚つけています。葉の大きさは2~4cmで、浅い鋸歯があります。一見カキドウシかと見間違えやすいのですが、よく観れば違いが分かります。カキドウシとは葉の厚みが違いますし、触れても香りがありません。薬草園の温室にあるのであれば、間違いなく、コレゾ ツボクサ!! と思い、お願いして、少し分けていただいたのです。 

 

漢方では、似類補類(にるいほるい)という考え方があります。

 

これは、植物の一部の模様や形が、軀の中の臓器に似ていれば、病んだその部分を補ってくれる・・・という考え方です。 

 

如何でしょうか、ツボクサの葉の形は脳の内部に似て見えませんか?

 

という事は、似類補類の考え方では、記憶力や認知機能によいとされるのです。また、インドの伝統医学アーユルベーダでも、ツボクサは主に神経と脳細胞を活性化するハーブとしているそうですが、それも似類補類の考え方なのでしょう。 

2015年、'Madecassosideによるラット海馬神経新生促進作用

という論文が発表されました。 詳細はこちら

 

その結果、MD(アルツハイマー病のこと)はAβ(アミロイドβのこと)凝集の抑制作用、抗アポトーシス作用、抗炎症作用や抗酸化作用を介してAβにより誘発され ''認知機能障害を抑制することが明らかとなった'' そうです。

  

そういえば、2017年に、NHKの「ためしてガッテン」で“認知症予防のカギはアミロイドβの排出”と報じていたのを思い出しました。

 

ツボクサの効用は、たくさんあるようで、WHOが「21世紀に遺すべき植物」と位置づけているというのです。自分で確認しようと検索してみましたが、未だにその論拠が見つかりません。

 

どなたか、此処に載っているよと教えて下さらないかしら・・・・・ 

 

 ツボクサの薬効は、配糖体には鎮静作用があり、抗菌作用も知られており、解毒、止血、利尿薬として使用されています。

 

フランスの報告に出産後の創傷治療に皮膚細胞の再生に効果があったとあります。その他、記憶力を高め認知予防に、血液循環の改善、肌のトラブルに等たくさんあるそうです。殊に肌に関しては流通している化粧品の450種類以上の製品に取り入れられているといわれます。名前を聞けば誰でも知っているような、いわゆるアンチエイジングの製品です。

 

  漢方に限らず,ハーブでも似類補類と云われているものはあります。

例えばラングワートPulmonaria officinalis がそうです。(園芸店では“プルモナリア”の名前で流通しています)和名はヤクヨウヒメムラサキ、ヨーロッパ原産の多年草です。

 ラングワートの葉の斑紋と排出されたカタル分泌物が似ているところから、このハ-ブの用途を思い付いたといわれています。ラングワートは、去痰、収斂作用があり肺や喉の炎症を鎮めカタル分泌物を排出し、結核性の咳や気管支炎を治します.   この考え方は、ウツボグサの項でもふれていますが、洋の東西共に同じような考え方で薬草を捉え、そうやって薬効を見極めていたのには驚きます。

 

現代の私たちは、こうして積み重なった先人の予見、経験の恩恵に預かっているのですね。 

 

話をツボクサに戻しましょう。

 

ツボクサ Centella asiatica は、関東以西から沖縄まで普通に見られる雑草といわれるものです。ツボクサのツボは“垣根で仕切られた庭を指します。坪庭のツボです。本属には20種類あるそうですが、日本で知られているのは、本種のみだそうです。ツボクサという名前は知らなくとも、別名にはクスリクサ、ゼニグサ、カイトリグサ(飼鳥草)等等があるそうですから、その名前なら聞き覚えがある・・・という方はいらっしゃることでしょう。

 

当園ではオオグルマ、トウキ、フジバカマ、オミナエシ、ワレモコウの近くに植栽していますので、ご覧下さい。 

 

ハーブではセンテラ又は別名のゴツコラと呼ばれます。東洋では長寿のハーブとされ、脳の栄養源で精神力を養うとされ、最近注目を集め、市場に流通しだしました。

 後期高齢者となって数年経た私自身にとっての最大の関心事は、認知症です。

 似類補類で考えれば、ツボクサは、頭にいいらしい・・・そんなに良いものなら試すっきゃない!! ばかりに、葉を茹でてお浸しにしたり、茹で汁をティ-として飲んだりしています。

左の写真は、茹で汁をハ-ブティ-としたものです。

 

 難点は、茹でても葉が少し強い(こわい)ことですが、茹で方が足りなかったのかもしれません。

レシピを探していると、以前東邦大へお出でになった奄美大島のハーバリスト蒿西 洋子さんのレシピに出遭いました。思いも付かなかった山菜寿司です。ご参考までに・・・山菜寿司レシピはこちら

 

原産地: 日本、中国、東南アジア

学 名:Centella asiatica

科 名:セリ科

別 名:ゴツコラ、ゴツコ-ラ、ゴトゥコラ、ゴッコ-ラ、ツボクサ、センテ

    ラ、センテラアジアティカ、ブラ-ミ、積雪草等。

利 用:春~夏に全草を採り、水洗い後、日干しにします。

      生食の場合は、必要時に応じて採取します。  

      生葉⇒擂り潰して、切り傷の応急手当に。止血に。

利用法;・乾燥葉、生葉とも同じように用います。

     湿疹に⇒乾燥した茎葉10gを水400cc1/2量になるまで煎じ、煎液で患部を洗います。

     解熱に⇒乾燥した茎葉一回量5gを水400cc1/2量になるまで煎じて服用します。

・生葉は、創傷治癒に。

効 能:強壮作用、去痰作用、末梢血管拡張神経、血行促進、鎮静作用、

    穏やかな利尿、肌の症状等。記憶力を増し、老化や老衰を遅らせる。

    副腎を強め、同時に、血液を浄化し、免疫機能を高め、皮膚の深部の

    回復を促します。精神的な疲れを減らす精神の強壮薬でもあります。

    肝臓病や高血圧の治療にも。

成 分: 全草に、α-アミリン型トリテルペノイドのアジアチコシド、

    プラ-モドなどの他、メソイノシト-ル、センテロ-スなどを

    含みます。