ノコギリソウ・セイヨウノコギリソウ

  連続の猛暑にもめげないで、ノコギリソウAchillea alpinaが懸命に咲いています。ノコギリソウは、本州中部以北、北海道、東アジア、北米に分布し、山地の草原に生える多年草です。草丈は50100cmほど、茎は直立し、互生している葉の質は硬く、切れ込みは浅く幅の広い葉です。

 

ノコギリソウは北半球に多く、ヨ-ロッパにも多くの種類があり、我が国で栽培されるセイヨウノコギリソウはノコギリソウによく似ています。花だけ見ても、見分けにくいのですが、葉を見れば、ハッキリした違いに気付きます。

下図は、葉を見比べたものです。

 ノコギリソウの葉は、質が硬く、切れ込みは浅く葉巾は狭いのですが、一方セイヨウノコギリソウの葉は、2回羽状に鋸歯状に深裂し、葉巾は広く質も柔らかいという違いがあります。花期は同じく6~9月頃です。当園には白花のみですが、園芸店ではヤロウの名前で花色も多く出回っています。

 

 セイヨウノコギリソウが日本に渡来したのは1887年(明治20年)ですが、株分けで容易に栽培できるし土質も選ばず繁殖力が強く、今では地域によっては、野生化しているそうです。 

 ノコギリソウは茎は直立して伸びます。古くは奈良・平安の頃には吉凶を占う占術にノコギリソウの真っ直ぐ伸びた茎が、重要な役目を果たしていたそうです。1708年に著された『大和本草』(やまとほんぞう)に「本邦筮占(ぜいせん)を為す者は、諸名山、霊山の産を用う」とあるそうで、有名な山で採れた真っ直ぐな茎50本を利用して筮を作って占っていたそうですが、後になりノコギリソウよりマメ科のメドハギが使われるようになり、さらに今日では、竹を使うようになったので「筮竹」(ぜいちく)の名前となったといわれます。

 

 これを読んで、今まで、名前は知っていてもよく見てはいなかったメドハギ。今メドハギを確認してきました。幸いにも直ぐ近くの一箇所だけに沢山生えています。メドハギの写真です。↓

 調べてみると、メドハギには止咳や去痰の薬効があるそうです。しかもその効果は、比較的顕著なのだそうです。 

臨床実験でもその作用は、認められているそうですよ。

なるほど茎はまっすぐ直立して伸びているし、茎は丸くコレを切りそろえれば、筮竹に成るだろうなと想えます。

  身動きの出来ない植物が、何故薬となる成分をつくるのでしょうか。

 考えれば、不思議でなりません。

 学  名:ノコギリソウ  Achillea alpina

      セイヨウノコギリソウ  Achilleae millefolium

 科  名:キク科

名:蓍草(しそう)

利用部位:葉、茎、花

薬  効 : 全草を健胃、感冒、強壮、鎮痛、止血、鎮痙、できものなどに用いま

     す。

使 法:

●ノコギリソウ

・健胃、強壮には⇒葉を、一日量510gを水400mlで半量になるまで

        煎じて、3回に分けて服用します。

     ・風邪には⇒一回量24gに水200mlを加え、やン量に成るまで煎じて

       飲用します。

      ・できものには⇒ 摺って粉末として患部に貼り付けます。

 

  (以下のセイヨウノコギリソウの利用については八木あき子氏の『ドイツ婦人のハーブ学』を参考にしました。)

 

●セイヨウノコギリソウ

  ・ノコギリソウと同じように、健胃や風邪には浸剤にします。

   ・マッサージオイルに⇒精油510滴を、セントジョンズワートの精油25mlで薄めて用います。

   ・ティ-⇒乾燥葉小さじ12杯に熱湯を注ぎ、時間をおいて飲みますが、葉が新しければ12分で。乾燥葉の古さによって時間は加減します。

     ・子宮内膜炎、白帯下⇒一日2杯のティ-を飲み、その上腰湯を使えば効果は顕著。

   ・痔瘻や脱稿に⇒軟膏にします。

<軟膏の作り方>

1杯分nおセイヨウノコギリソウの葉+ラズベリ-の葉+キンセンカの葉ををワセリン500gの割合で煮て、三日おいてからもう一煮て、布で濾して保存の容器に入れ、冷蔵庫で保存します。

・チンキ剤⇒尿路疾患、月経不順に用います。