ウメ

  園では、白梅が満開です。紅梅も咲き始めています。

 

ウメと聞くと、時には考えただけでも酸っぱい唾液がでますが、これは、パブロフの犬での実験と同じで、条件反射でそうなるのでしょうね。

 ウメは中国原産の落葉樹で、我が国には奈良時代に、薬用として先ず烏梅(うばい)が遣唐使によってもたらされ、その後に梅の木が導入されたといわれています。早春、葉の出る前に前年枝に開花します。萼片5枚、花弁5枚、1本の雌しべの周りに多数の雄しべを持った花は、花茎はほとんどありません。花色は白、薄紅、紅とあり、咲き方にも一重咲き、八重咲きと多様です。多数の園芸品種があり、果実もそれぞれ特色のあるものが多くあります。 

 

 ウメの果実は、生では酸味が強く青酸配糖体を含有しているので、生食されることはほとんど無く、大部分は加工されます。加工品で一番ポピュラーなのは梅干しですが、一口に梅干しといっても、白梅干し、赤ジソ漬け、蜂蜜漬け、焼き梅、かりかり梅などいろいろあります。その効能は、梅干しには高濃度のクエン酸を含むので疲労回復に良いとされています。また梅のもつ有機酸には食中毒予防に有効です。ただし塩分も多いので、食べ過ぎは要注意です。

 

 子供の頃、祖母が梅のエキスを作っていて、腹痛の時は必ず舐めさせられたのを思い出します。黒くどろりとしていたように思いますが、黒焼きだったのかもしれません。93才の姉にメールで訊いたら、「青梅を摺りおろして,煮詰めれば出来る」と返事がありました。当時は随分長い時間を掛けて作っていたように思いますが、意外に簡単そうなので、今年梅の時期に一度挑戦してみようと思います。

 

 遣唐使によってもたらされた“烏梅”とはどんなものでしょうか。

ウメの生薬名は烏梅(うばい)と云います。未熟な青い果実を、燃やした藁の煙を当てて、燻製にした色が烏の羽色のような黒いものです。

 

 中国の最古の本草学書『神農本草経』の中品(体力を養う薬)に収斂、止瀉、解熱、鎮嘔、去痰、駆虫作用等の効能を挙げています。我が国でも、烏梅は江戸時代正徳年間に著された『和漢三才図会』86巻梅の項に白梅と並んで烏梅が記載されています。烏梅は悪性流行性疫病を治し、鎮咳や解熱に、白梅は(梅干しのこと)おできや乳腺炎に薬効があると載っています。

 

しかし、烏梅は“漢方薬”としてだけではなく、別の用途の“紅花染めの媒染剤”として、口紅や頬紅には烏梅は欠かせない貴重なものでした。奈良県の月ヶ瀬梅林は染色用として植えられた梅林だそうですが、製造に手間が掛かるし、需要の減少で廃業し、現在は国内での生産は唯一奈良県に1軒あるのみだそうです。

 

〈ご参考までに〉烏梅の製造については、こちらに、紅花染めの烏梅の利用についてはこちらに詳しく載っています。

 

 私は、梅と云えば菅原道真の「東風吹かば にほいをこせよ 梅の花、主なしとて春な忘れそ」を思い浮かべます。エ~ッ、“忘るな”じゃぁないの?と思われる方もいらっしゃることでしょうが、文献によって異なるので、どちらも正しいのです。(高校の国乙で習ったので、出典は何に依っていたのかは覚えていないので分かりません。“国乙“というと、年齢が分かちゃいますねぇ(^^;)

 しかし、園にある梅からは、詠まれているような匂いはほとんど感じられません。高木となっているからでしょうか。垂れ下がった枝を引き寄せて嗅いでみると、微かに感じられます。匂いが感じられないのは、高さの問題なのでしょうか。はっきりした香りの記憶がないので、確認するため幕張本郷の梅林園に行ってきました。近づけば、辺りではほのかな優しい香りが、漂っていました。

 

好都合にも市の担当の方と遭えたので、ウメの匂香についてお訊きすると、香りの強い品種と香りの薄い品種があるとのことでした。園のウメは、香りは薄い方の品種なのかもしれません。数本あるウメが点在しているので、なおのこと感じられないのだろうと思えます。

 学  名Prumus mume

 科  名; バラ科

 生 薬 名: 鳥梅(うばい)

 原 産 地: 中国中部

 利用部位: 未熟果実(薬用部分)⇒未熟な青い果実を、藁を燃やして煙を当て燻

      製にするか、青梅に煤をまぶして燻製して強い酸味のある烏梅にし

      ます。 

効   用: 疲労回復、食中毒予防。 

烏梅⇒・風邪に。水洗いして、12個を、水200ccで半量になるまで

    煎じて熱いうちに服用します。 

         ・染色の媒染に。     

梅干し⇒解熱、鎮痛作用があり、健胃薬、食欲増進に。

      梅酒⇒健康果実酒に⇒洗った青ウメを、完全に水切りして、容器に

         青梅11,2kg、グラニュー糖400g、ホワイトリカー1.8㍑を入

         れ蓋をして冷暗所で保存し、半年~1年を経過したら、漉して

         飲用します。 

梅エキス⇒下痢、便秘、消化不良などに。日本で開発された民間薬です⇒青梅を陶製のおろし器で擂りおろし、木綿23枚重ねて絞り、“ゆきひら”で、アクを取り除きながら煮詰めます。 

成  分: 梅の酸味は、有機酸のクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、消石酸。 

      その他オレアノール酸などのトリテルペン。

 

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