キンモクセイ

 病院玄関近くに大きなキンモクセイが3本あり、今花盛りで、辺りには芳香が漂っています。しかし無念にも夜来の風雨で花は落ちて、樹下はオレンジ色の絨毯のようになってしまいました。

 

 以前の職場では、平成生まれの学生たちはキンモクセイノ匂いを “トイレの匂い“と表現していて興ざめでした。平成生まればかりでなく昭和の終わり頃生まれた方にも、その表現の方は多くあります。語彙の少ないことを嘆かわしく思い、何故“トイレの匂い”としか表現できないのか!!と憤慨してみても、彼等には「トイレの消臭剤」として記憶されているので仕方ないのでしょう。現在のように水洗トイレが普及していなかった一昔前の「トイレ消臭剤」と云えば、科学的に合成されたキンモクセイの強い香りになったと思われます。 ところが、最近ではでは売り場でも見られなくなっていますが、トイレの洋式が変わり、強烈な匂いでなくても、心地よいソフトな香りで充分役目が果たされるからなのでしょう。

キンモクセイは、小さいオレンジ色の花を密生してつけ、芳香を放つ常緑小高木です。主に鑑賞用として庭木や公園などに植えられています。日本に渡来したのは江戸時代ですが、外国から日本へ移入する場合、花が沢山咲く個体の雄株を選んで導入したため、日本には雄株しかなく結実は見ることが出来ないのです。

 

単にモクセイ(木犀)という場合は、キンモクセイ、白い花色のギンモクセイOsmanthus fragrans、園芸種とされる花色が淡黄色のウスギモクセイOsmanthus fragrans の三種の総称です。

キンモクセイは関東に、ギンモクセイは関東以西に多く栽培されています。木肌がh灰褐色で縦に筋が入り、サイ(犀)の肌に似ているのが名前の由来だそうです。

花色: オレンジ色       白色          淡黄色

葉:  葉は全縁でやや波    やや大きめ       葉幅が狭い 

    うっている       葉縁に細かい鋸歯           

果実: 結実しない       結実する        結実する 

分布: 関東~宮城迄            関東以西に多い 

   モクセイは耐寒性がないためか、秋田、青森、北海道では開花しない   

 キンモクセイ、ギンモクセイとも薬用としては、歯痛やうがい薬として用いられています。お茶を入れるのと同じ要領でキンモクセイ茶として飲用すれば、低血圧の改善や,不眠、健胃に効能があるようです。また花を乾燥させて焼酎、ワイン、ブランディ,ジンなどに漬け込んで薬用酒にし、就寝前に飲用すれば、不眠に効果があるとされています。

 

中国では、楊貴妃が好んだお酒として、“桂花陳酒”があります。

これはキンモクセイの花を白ワインに3年間漬け込んで作りますが、楊貴妃は不眠の悩みがあったのでしょうかねぇ、それとも美を保つためだったのでしょうか。


学 名Osmanthus fragrans var. aurantiacus

科 名:モクセイ科

生薬名:金木犀(キンモクセイ)

利用部位:花

利用法:花⇒秋に樹下にシートを敷き,落ちてきた花を集め採り、通し良いところで乾燥させます。

・ティーに⇒乾燥花(必要に応じて生花でも良い)を小さじ23杯に熱湯を注ぎ、、お茶を淹れる要領で。

この時の割合は茶葉2:キンモクセイの花1を目安にお好みで。

茶葉は紅茶、ウーロン茶でも、発酵度低い方が合うようです。

またお好みで蜂蜜で甘味を。

薬用酒に⇒生花・・・1/2C(花は水洗いせずごみを取り除いたもの)

ホワイトリカー/・・・300cc

氷砂糖・・・1/2C

蒸気の材料を広口瓶に入れ、3ヶ月ほど寝かせます。

(また花は乾燥させてもよく、ワイン、ブランディ、

 ジンなどでも可。)             

効 能:・お茶⇒歯痛、うがいに。不眠症、低血圧の改善、健胃に。

    ・薬用酒 ⇒不眠に。  

成 分:香りの主成分はβ-イオノン、リナロール、γ-デカラクトン、リナロールオキシド、cis-3-ヘキセノールなど。

 

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