ゲンノショウコ

  土曜の丑の日頃が最盛期のはずなのに、ゲンノショウコが漸く咲き始めました。名前は知っていても実物と合致しないのでしょうか、「この花は?」と度々尋ねられます。

 これが、ゲンノショウコの花です。紫紅色と白色の花がありますが、東日本では白色が多く、西日本では紫紅色の方が多いようです。私は広島県生まれですから、ゲンノショウコは紫紅色だとばかり思っていましたが、千葉県に来て、白花以外の色変わりの花(下図) も何色か目にしました。

 上図の右端は、同じフウロソウ科フウロソウ属の“シオヤキソウ"に似ていますし、左端のはフウロソウ科ではあってもオランダフウロ属の流通名“姫フウロ"に大変よく似ています。しかし葉の形は確かにゲンノショウコですから、ゲンノショウコであることに間違いは無かろうと思います。 

 

ひょっとしてハーフ? と思ったりしますが、普通に見られる二種が混在していても、花色には全く変化は見られないのですから、何故色変わりがあるのかについては、どなたかに伺ってみなくてはなりません。

 

人間でも、様々な人がありますから、それと同じなのかなぁ・・・とも思いもしますが、“色変わりのゲンノショウコ”については宿題です。

 

ゲンノショウコGeranium thunbergiiは、全国各地の日本の日当たりのよい山野でよく見かける、フウロソウカの多年草です。古くからお腹の薬として利用されてきました。煎じて飲めば下痢は直ぐ治まるというので「現によく効く証拠」と云う意味でゲンノショウコと呼ばれるようになったといわれ、ドクダミやセンブリと共に日本の三大民間薬草」としてよく知られています。

 民間薬とは、文字が使われないような古い時代から、口伝と経験から生活の中に取り入れられ、伝えられてきたものです。

 

ゲンのショウコは、開花最盛期に全草を刈り取り、乾燥させて用います。その頃は、ゲンノショウコが生えているその辺りには、葉の形がよく似たキツネノボタンも生えていて間違って採る事例が報告されています。

←キツネノボタン

 

触って液がつけば皮膚炎になったり、誤食すれば、激しい下痢や嘔吐、死亡例もあります。

 見分け方は、ゲンノショウコの茎に生えている毛は、葉に直角に生えていますが、キツネノボタンの茎には斜め上向きに柔毛が生えているので、見分ける事は出来ます。

 

下図を参照してください。

 間違えて採取すると事故になるため、花色の異なる開花の頃に採取するのでしょう。最盛期なので収穫量も多いし、乾燥するにも、何より誤認を予防するにも丁度よい時期、其れが“土用の丑の日”頃だったのではないでしょうか。

 

 胃腸病の民間薬では、有名な「陀羅尼助」(だらにすけ)があります。7世紀末頃疫病が大流行したとき役行者(えんのぎょうじゃ)が、山にあるキハダやゲンノショウコなどを用いてこの薬を作り人々を救済したと云われ、以来、大峰修行の山伏達によって広まったそうです。7世紀末といえば今から1300年も前ですね。其れが現在でも胃腸薬として用いられているということは、まさしく“げんのしょうこなのでしょう。

 

このように民間薬から作られた薬を、漢方薬に対して和漢薬と云います。

 

学  名:Geranium thunbergii
科  名:フウロソウ科 
利用部位:地上部 花、茎、葉
生 薬 名:現証拠(ゲンノショウコ)
作  用: 止瀉作用、大腸蠕動運動抑制作用、腸管収縮抑制作用

             利尿、抗炎症、健胃、整腸、緩下、抗菌、強壮作用
適  応:下痢止め、便秘解消、胃腸の機能を高める、食あたり。
使 用 法: ・下痢止めに⇒成分のタンニン。

       一日量20gを、水400ccで半量になるまで煎、暖かいうちに服用。

     ・便秘解消に⇒成分のフラボノイドの働きで便秘解消。

                   同じようにして作った煎液を冷まして服用。

            ・口内炎。喉の痛みに⇒背演繹でうがいします。
     ・冷え性や血の道に⇒ゲンノショウコ風呂にします。
         ゲンノショウコ200g+ヨモギのは100gを布袋に入れて、入浴

                         します。
成  分: 下痢に効くのは、タンニン。その他クエルセチンやコハク酸など。
 

 

 

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