トウキンセンカ(カレンヂュラ)

 花屋の店頭に春の花のキンセンカが並び始めでいます。花期が長いので花壇に植えたり、切り花で昔から親しまれてきた植物です。あまりにも見慣れているので、日本に昔からあったと思われるかもしれませんが、キンセンカの原産地は地中海沿岸、南ヨーロッパなのです。江戸時代に中国を経て花卉用、薬用として入ってきた植物です。 

  一般にはキンセンカと呼ばれますが、 植物名は、トウキンセンカCalendula officinalisです。耐寒性のある一年草で、花色もオレンジ色、黄色、咲き方も一重咲きや八重咲きなど多くの品種があります。性質は強くて育てやすく、花の少ない冬の彩りには欠かせないものの一つです。

 

近縁種にはホンキンセンカCalendula arvensisがあります。                         

 同じく江戸時代に渡来しましたが八重咲きのトウキンセンカが定着したため、こちらは、ホンキンセンカ、又はヒメキンセンカと呼ばれています。

 

 現在では「冬知らず」という名前で市場に出ているのがこれに当たります。この種類は園芸用です。

 

 こぼれ種で容易に増え、各地で野生化しているとの報告もあります

 こちらが、トウキンセンカです

和名のトウキンセンカは中国からきたキンセンカという意味です。中国、明の時代の1406年に著された『救荒本草』に既に「金盞兒花」の名で載っているそうです。その内容は飢饉時に救荒植物として利用できる植物400種あまりの形態を図と共に解説し、その料理法を記してありますが、それらの全てを実際に栽培し、観察して描画してあるそうです。

 

その後1596年に出版された『本草綱目』には「金盞草(きんさいそう)という名で載っていますが、発刊後間もなく江戸時代の慶長年間(10年頃)には、我が国にもたらされており、其れまでの本草書より内容が優れていたので、度々本を輸入したり、和刻板も出されたりして、幕末までは本草の文献としては基本とされていました。江戸時代には度々の飢饉があり“何を食べるか”という問題に直面していたので切実な事だったでしょう。

 

飢饉の経験を踏まえ、植物の比較や同定をして和名をつけ日本独自の救荒本草書として、『救荒本草啓蒙』、『救荒野譜啓蒙』などがあり、山野に自生する食用本草など身近な草木をわかりやすく紹介しています。被害甚大であった一関藩(現在の岩手県)の藩医・建部清庵(たけべせいあん)は、飢えに苦しむ人々の姿を目の当たりにし何とかしようと、飢饉対策に『民間備荒録』、続編『備荒草木図』をまとめました。備荒の“荒”は飢饉の意味で、飢饉への備えと、草木の調理法や中毒した場合の解毒法などを記したものです。当時の人々にとっては、まさしく救世の書であったろうと思います。

小説・藩医宮坂涼庵(和田はつ子著)では、このことが題材となっています。

 

キンセンカの名前のことから脇道に逸れましたが、花卉とされる植物にも、その様な一面があったということも知っていただければと思います。

 

 ハーブ名はカレンヂュラCalendula officinalis又はマリーゴールf^と呼ばれています。英名ではポットマリーゴールドPot marigoldといいますが、potとつくのは“食用に出来る野草”の意味です

  しかしマリーゴールドの名前からは、大方の方はフレンチマリーゴールドTagetes patula (別名クジャクギク)やアフリカンマリーゴールドTagetes erecta (別名マンジュギク)の方を思い浮かべられることでしょうが、これらは鑑賞用であって、薬用としては用いません。効用があるとすれば、アブラナ科の植物、球根類、ワイルドストロベリー、バラなどの近くに植えれば葉の臭気で防虫効果があるといわれる“コンパニオンプランツ”としてでしょう。               紛らわしいので、薬用として使う場合はカレンヂュラと呼んでいます。

 

カレンヂュラの歴史は古く、古代ローマ時代から花や葉を料理や薬用として利用されていました。

葉はサラダに、花はエディブルフラワー(食用になる花)として天ぷらにして利用されます。乾燥した花弁はサフランの代用として染色や料理の色づけに、ご飯に炊き込んだりします。

 

 薬用としては、花弁を利用します。抗炎症作用、抗酸化作用があり、アルコールに浸けてチンキ剤にして飲み物に数滴入れて飲用したり、浸剤にしてハーブティーとして飲用したり、収斂作用があるので化粧水としても使えます。浸出液と蜜蝋で軟膏にすれば湿疹の塗布薬やリップクリームにも使えます。殺菌作用もあるため外用すれば傷や火傷には有効です。

 

 色鮮やかなオレンジ色の花弁には、天然色素のルテインが豊富に含まれています。ルテインは、眼の中の網膜や水晶体に多く存在し、パソコンやテレビから発せられるブルーライトや紫外線、光により発生する活性酸素を除去するのに欠かせません。抗炎症作用があって、眼精疲労や目の病気予防に使われています。年齢と共にルテインは減少し視力の低下や白内障、華麗黄斑変性症などの眼病にかかりやすくなるのです。ルテインが集まっているところが黄斑ですが、加齢によりルテインの濃度が低下するとエネルギーの高い光によってダメージを受け、発病にいたるそうですから、ルテインの摂取が眼病予防には有効という研究発表もあります。

 

 キンセンカの花弁を乾燥して自分で淹れるハーブティーも良いのですが、時間がかかるし継続して飲もうとすると量がとても間に合いません。ルテインを摂るには、手っ取り早く市販のハーブ・カレンヂュラを使う方がいいかもしれませんね。

 

学  名:Calendula officinalis
科  名:キク科
生 薬 名: キンセンキク(金盞菊)
利用部位:花・舌状花
薬     効:発汗作用、解熱作用、殺菌作用、消炎作用、抗ウイルス作用、血液循環
     作用、利尿作用、生理痛対策。利尿、瀉下、止血、胆汁分泌促進、芳香
     性苦味健胃薬、通経、外傷、皮膚炎、胃の炎症、生理痛に。
    ◎花弁には、カロテノイドの一種ルテインを多く含んでいます。
       ・白内障を予防に。
       ・黄斑変性症を予防や改善に。
       ・視界のゆがみ・ぼやけに。    
使 用 法:●花弁の浸剤(ハーブティー)⇒ティー(茶剤)として。
                  収れん作用があるのでそのままローション
                  として。
     ●チンキ剤⇒美肌効果、赤ちゃんのおむつかぶれや湿疹、肌荒れに。
     《美肌オイルの作り方》酸化しにくいマカダミアナッツオイルなどに浸
                け込んで→ガーゼで濾す。自宅で簡単に作るこ
                とができます。
     ●花弁⇒生のままサラダに、パンやケーキに混ぜたりすると彩がきれい
         です。炊き込みご飯にも。
     ●花⇒天ぷらに。
成    分:精油、サポニン、苦味質、樹脂、
    花弁には、カロテノイドの一種ルテイン、 

 

※キク科にアレルギーのある方・妊娠中の方は使用しないこと。   
        (妊娠中、料理に使う場合は少量で)

    

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