ミナトタムラソウ(Wild Crary)

本当はミナトタムラソウだった、オニサルビアの話です。


 2005年、この薬草園を造園したとき、東邦大学から持ち込んだリストに入っていた“オニサルビア”。当時導入した140種の植物の大方は消滅したなか、裏門からの道端に、雑草化して生えている草があるのですが、お気づきでしょうか?

 本家の東邦では、現在は授業では使わないからと、八千代市にある圃場に移していて、今では習志野の構内では観ることが出来なくなっている“オニサルビア”です。↓これがオニサルビアと呼んでいたオニサルビアです。

 オニサルビアと云えば、ハーブでは、クラリーセージ Salvia scarea の和名のことです。園にある形態のオニサルビアは、どの本にも載っていませんし、検索すれば、クラリーセージのことばかり出ます。

 それなのに何故オニサルビアと呼ばれているのか、その来歴も判然していないのです。正しい名前は? 薬効は?という情報が欲しくて、千葉中央博物館で同定をお願いすることにしました。同定(どうてい)とは、ある対象について、そのものにかかわる既存の分類のなかからそれの帰属先を探す行為で、生物の分類学上の所属・名称を明らかにすることです。

 「これは難問ですね」と云われましたが、10日程して回答を戴きました。 

  おかげで、この植物の名前は「ミナトタムラソウ」Salvia verbenaca (サルビア・ベルベナカ)、別名は Wild Claryと分かりました。けれども、今度は別の疑問が湧きました。タムラソウやアキノタムラソウに似てもいないのに、何故この名前になったのか?という疑問です。私としてはその点も知りたいところです。 


 植物名が分かったところで、本で確認すると『日本帰化植物写真図鑑に記載がありましたし、検索でも幾つかヒットしましたが、どちらも薬効についての記載はありません。なおも探していて、苦手な英語の本『Wild Flowers of Britain』をパラパラとしたとき、見つけたのです。 

 “The seeds may be soaked in water and the mucilage used to cleanse and soothe irritations in the eyes. Roots previde a snuff,and the leave used as a herb with lemon or orange juice.”

 とあったので、この「ミナトタムラソウ」はメディカルハーブとしてここに在ってもよい植物だったのです。(私は、メディカルハーブとは、薬用ばかりでなく、“人間の生活に役に立つ植物”と広義に捉えています。)

 

 そうと分かれば、植栽場所を確保して移さなくては・・・・・

 

 これからの時代、セルフメディケーションは考えなくてはならないことですから、雑草と云われる植物であっても、それぞれが有している効能にも目を向けて、頭の片隅にでも置いて欲しいと思っています。

 

 本来のオニサルビアであるクラリーセージについては次回で。

植物名:ミナトタムラソウ

学 名:Salvia verbenaca

原産地:ヨーロッパ

薬 効:シチリアの伝統医学では、よく知られている多年草です。地上部から得られた精

     油は、細菌の増殖に阻害剤として良好な活性を示したそうです。

用 途:種子を水に浸した粘液⇒洗眼薬として。葉はジュースに。

 

                                                     戻る