『古事記』に、登場するガガイモ

 朝の散歩中、竹藪の縁の竹をを見上げていると、散歩している数人の方から,「何を見ているのですか?」と声を掛けられます。「ガガイモの実を探しているんです」というのですが、ガガイモが理解出来て、ピンク色の花の分かる方はほとんどないのです。皆さん、体力保持のために歩く方ばかりなので、脇目もふらずに前を見て歩かれているので、気が付かれないのでしょう。 

 ガガイモ Metaplexis japonica は全国の日当たりのよい空き地や土手に普通に生える蔓性の多年草です。周りの植物に絡みついて伸び、覆い尽くします。

 

 普通に生えているとはいえ、どこにでもあるわけではないのです。30年近く前には船橋の隣、鎌ヶ谷市の街中でも目にしましたが、近頃は滅多に出遭えません。25年ぶりくらいで今夏、船橋・高根の休耕田の縁で見つけましたが、生えている場所から少し離れるともう一本も見つかりません。

 人の歩幅は身長-100cmと聞いたことがあるので、歩幅で計ってみました。48歩の間だけにガガイモはあります。計算式に填めれば、50cm×48歩で、およそ24mの間にしかガガイモは生えていないのです。ついでながら,私の身長も分かっちゃいますねぇ(-_-;)

 

 神代の時代からあるガガイモですが、夏にはあれほど花があったのに,種子の莢実は,殆ど目につきません。数個を目にするばかりです。そう言えば同じガガイモ科の植物には、結実し難い種類が多いので、ガガイモも結実し難いのでしょう。

『古事記』に登場するのは、花ではなくて、種子の莢実なのです。

 

 ガガイモは、全国の日当たりのよい空き地や土手に普通に生える蔓性の多年草です。ガガイモ科ですが、新分類法ではキョウチクトウ科に変わりました。が、今ひとつぴんと来なくて、大弱りです。

 周りの植物に右巻き(Z巻き)に絡みついて登り覆い尽くします。蔓の巻き方については「スイカズラの蔓は右巻き」を参照してください。

 葉は、やや厚めの葉脈のハッキリした長卵状心形で、先はとがり、裏面は白っぽい緑色をしています。     

                 

 花期は8月、淡紫色の5弁花を数個固まってつけます。花弁の内側には、長い毛が密生しており、最盛期には甘い匂いが辺りに漂います。

 

 よく似た葉には,イケマ(これも滅多にみられませんが)や、ヘクソカズラがります。それぞれに違いがあるので、容易に見分けることはできます。

左は竹に絡みついて登り、高いところで果実(莢実)を付けている様子です。     

果実は紡錘形の袋果で、長さは8~10cm、幅は2~2.5cmの大型です。 熟すにつれて表面にはイボのような突起が出てきます。
自然な裂開を待っていましたが、未だ先になりそうなので、手で開いてみました。

種子は翼のある扁平な楕円形で、種子の先端には白くて長い絹糸状の種髪がついて、袋果に詰まっています。

種髪とは、裂開する実の種子を飛ばすためにある毛のことを云います。昔はこの毛をパンヤと云って綿の代用として、針刺しにいれたり、印肉にしたり、止血に用いたりしていました。別名をクサパンヤといいます。同じように種を飛ばすキク科のタンポポやアザミの毛は冠毛といいます。

 

『古事記』には、種を飛ばして空になった莢実の半分が、舟となって登場するのです。

大国主命が日本の国作りをされたとき、アメノカガミ(天の羅摩・カガミ)の舟 に乗って、蛾の一種のヒムシの皮を剥いで衣にした神と協力した・・・とあります。この時のカガミとはガガイモの古語ですから、ガガイモの莢実の外皮をを舟にした・・・というのですから、少名毘古那(スクナヒコ)神は本当に小さな方だったのでしょう。ご参考までに口語訳を載せておきますので、こちらからご覧下さい。

『日本書紀』には、「一人の小男がカガミの皮で作って船に乗って・・・」とあるそうです。日本書紀は未読なので、一度確認してみなくてはなりません。

 

 こうして日本という国造りが出来た・・・という話は,理系の方からは笑われるでしょうね。しかし神代から有る植物が、このような形で登場し、しかもそれを目の当たりにしている!!と思えば、自然の眺め方が違ってきませんか?

ガガイモは薬用としても用いられています。

種子は,羅摩子(らまし)といい、強壮、強精薬に使われ、白い毛は止血の作用があり,切り傷に用います。蔓の繊維は強靱なので,弓弦や釣り糸に使われたりします。

生の葉茎をちぎると白い汁が出ますが、この乳液は、ヘビや毒虫の咬み傷やイボとりに用います。

古代でも、このような使われ方だったのではないかしらと思うのです。

学  名:Metaplexis japonica
科  名:キョウチクトウ科(←ガガイモ科)
生 薬 名:羅摩子(らまし)・・・果実を乾燥させたもの
利用部位:果実、種子、葉⇒初秋に採種し手、日干しにして乾燥させます。 
               生の葉⇒必要時、随時採取します。
薬     効:乾燥種子、葉茎⇒粉末にして滋養強壮に。
使 用 法:滋養強壮⇒・乾燥種子、葉茎の粉末にして1日2回、2~3g服用します。

     腫れ物の外用薬に⇒葉茎の粉末にクチナシの果実の粉末を酢でねり、患

              部に貼ります。
     蛇、毒虫、虫さされの解毒⇒生の葉茎から出る白い汁を,直接患部に塗

              布します。(イボとりにも)

     止血に⇒種子の種髪(白い毛) 

     食用に⇒・若い芽を茹でて,油炒め煮物に。

         ・未熟果実⇒天ぷらにして。

     種髪(白い毛)⇒綿の代用で針山に詰めます。
成    分:葉茎に⇒サルコスチン、キジョラニン、メタブレキシデニン