コブシ

  園にはコブシの大木があり、遠目にも目立つそうです。「あの白いのは何だろうと思って来てみました。こんなに大きなコブシは始めてみました。」と態々見に来られた方がおっしゃいます。

 

白木蓮は「白い貴婦人」といわれるそうですが、コブシも「白い貴婦人」に決して劣らない美しさです。 

 コブシMagnoliaceae quinquepetaはモクレン科の落葉生小高木で樹高は8m程になるそうです。朝鮮半島、日本の全土に野生があり、庭木にも栽培もされています。葉は広倒形卵形で先が急に短く尖っており、葉裏は淡緑白色です。新葉より早く、小枝の先に香気のある白い大きな花を1箇つけます。地域によっては、コブシの開花を目安に農作業を始める地方も多く“田打ち桜”とよばれたり、種芋を出して植えるので、“芋植え花”とも呼ばれ、花を沢山つければ豊作になると、豊凶を占われるそうです。

 上の写真はコブシの果実です。この形が、握り拳に似ているのが名前の由来といわれています。 コブシの種類にはシデコブシ(ヒメコブシ)、タムシバ(ニオイコブシ)などがあり、よく似ているので見分けるのは難しいです。果実の形も似ており、中には赤い種子が沢山入っています。

 

 同じモクレン科のモクレンは中国原産のです。飛鳥・平安時代に僧侶の衣を木蓮染めといったそうですから、古い時代に渡来したと思われます。中国では蕾を乾燥させて生薬 辛夷(しんい)にします。コブシを漢字では“辛夷”と書きますが、牧野富太郎博士は【コブシ(Magnolia Kobus DC.)は日本の特産で、中国にはない落葉喬木である。そして全然漢名はないから、これを辛夷というのは絶対に間違っている。】と、書かれています。(牧野富太郎著『植物一日一題』)

 

 しかし、生薬名ではコブシも辛夷ですが、生薬として使う辛夷には色々あり、日本では、コブシやタムシバの花蕾を和辛夷と呼んで、蓄膿症や鼻炎に昔から用いていました。近年では中国よりボウシュンカ、シモクレンハクモクレンなどのモクレン属に属するこれらの花蕾が輸入されて主流になっています。

 

 ご参考までに辛夷と呼ばれるホオノキ、オオヤマレンゲの写真も載せておきます。

    タムシバについては、こちらご覧下さい。

 

 名:Magnolia kobus

科 名:モクレン科

生薬名:和辛夷(わしんい)

利用部位:花蕾(開花直前が最適)

利用法:蓄膿症・鼻炎に⇒和辛夷を刻んで、一日量25gを、水500ccで半量になるまで煎じ其れを漉して3回に分けて食感に服用します。 

効 能:蓄膿症、鼻炎頭痛

成 分:精油。シトラール、シオネール、オイゲノール、クエン酸など

 

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