ハマスゲ・カラスビシャク・チガヤ・・・厄介ものといわれても

 構内、至る所に出てくるハマスゲ、チガヤやカラスビシャクです。カラスビシャクはこの時期には姿を消していますが、ハマスゲとチガヤは、我が世の春を謳歌しているように、一面蔓延っています。

冬に向かうと、地上部は枯死し影も形もなくなります。凍土のようになっても、どっこい、土の中では生きているのです。掘ればハマスゲの塊茎は連なって出てきますし、チガヤの根茎、カラスビシャクの球茎もごろごろと出てきて、私を悩ませてくれます。庭仕事をされている方にとっては、本当に厄介なものでしょう。

ハマスゲと聞いてもどんな植物か思い当たらない方も多いと思います。名前にはスゲとついていますが、スゲ属ではありません。道路の分離帯や空き地でよく目にする植物です。アスファルトを突き破って生えているのを見ると、“エッ、こんなところにも!”と驚きます。植物の細胞の圧力は510気圧あるといわれます。これだけの圧力でアスファルトを押し上げて、地上に出てこられるのです。

ハマスゲは、正倉院宝物殿にも薬物として「香附子6個」と載っていますので、薬用又は薫香料に使われていたと知ることが出来ます。ハマスゲは生薬名を香附子(こうぶし)といいます。関東以西の各地、全世界の温暖地帯に分布し、日当たりの良い砂地や草原に生えています。当園の土は砂混じりの土なので好条件の下、誰に憚ることなく群落を作っているのでしょう。

 チガヤは、各地の日当たりの良い道端や土手などに生え群落を作っています。子供の頃、褐色の花芽を抜いて食べたことがあるのを思いだされる方は多いのではないでしょうか。甘い花芽はチバナ又はツバナと呼ばれ、江戸時代には売り歩いていたそうです。晩秋になると、葉の先端から赤く染まり、美しい景観となります。冬期地上部は枯れても、春になると細く尖った新芽の先は、周囲の植物の根を貫通して出てきます。白い花穂が一面にそよぐ様は幻想的ですが、種を飛ばしては大変なので、抜き取るようにしていますが、地中には東京の地下鉄路線図さながらに拡がるので、太刀打ちできない状態です。このように厄介なチガヤですが、甘い花芽と花穂には止血作用があり、出血と凝固の時間を短縮しますし、根茎は生薬名を茅根(ぼうこん)といい、むくみに利尿薬として用いられています。

 カラスビシャクは、農家のお年寄りが孫の子守をしながら球茎を堀り採って集荷人に売り小遣い稼ぎをしたことがあったことから“ヘソクリ”とも呼ばれます。別名の“ヒャクショウナカセ”は、文字通り畑地に繁茂すると除草が易くない事を表現しています。

地中深く1cmほどの球茎があり、長い柄のある葉を出します。同じ球茎から葉よりも長い花茎を伸ばして、緑色の筒状の花をつけますが、ご丁寧にも種子に加えムカゴまで作って増殖します。花の形を柄杓(ひしゃく)に見立て、人が使うには小さいので、カラスの名を当てたのが名前の由来のようです。

生薬名は半夏(はんげ)といい、吐き気を鎮める作用があり、漢方処方でつわりや消化不良、嘔吐などに用いられています。 ハンゲショウという植物がありますが、その名の由来は、葉が半分白く変わるのが、半夏(カラスビシャクの生薬名)が咲く頃だからといわれています。

 このように雑草と思われ,厄介ものと思われている植物にも、それぞれ効能があり、私達はその恩恵に与っているのです。

このことを知れば、雑草といえど・・・と、見方が変わりませんか?

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